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Carpet and Sound Rec, Video & Cassette Release Party-Talk Session vol.1        「ふるさとの原風景を未来へ」 “Apollo&Char Company 川村明子さん”

OCT. 02, 2025

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9月5日に中目黒の光婉/Kōenで、富山県射水市にある「House of zutto」で録音した音源のリリースを記念したイベント「Carpet and Sound Rec, Video & Cassette Release Party – Talk & Live」を開催しました。JOURNALでは、イベント内で行われたトークセッションを2回にわたってご紹介します。

聞き手:山倉礼士さん(IDREIT®︎)

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– 「ふるさとの原風景を未来へ」というコンセプトのもとに計画された「House of zutto」は、アートディレクターの川村さん自らがリノベーションのデザインを手掛け、24年10月に竣工しました。川村さん、なぜ射水だったのか、を聞かせてください。

川村:2020年に知人の紹介で、加治幸大さんという富山県の経営者と会う機会があり、デザインの相談を受けました。その時に、地域が過疎化しているという課題を聞いたのですが、そこでの世間話を私が真に受けて、こんなことができるのでは、というアイデアを企画書にまとめて提案したのがそもそもの始まりでした。

– 川村さんが富山のご出身なのかと想像していましたが、そうではないのですね。

はい、偶然の縁から始まった取り組みなのです。初めて富山を訪れて、立山連峰や、ベニスのように運河のある風景を見た時は、その美しさに驚きました。そして、意気投合した加治さんらとともに地域をなんとかしたい、という思いから私たちが都内で経営するヴィーガンカフェ「エイタブリッシュ」を富山に開業する連携が始まりました。富山に通ううちに、これはホテルに泊まってやるような仕事ではないと思い立ち、拠点となる場所を探し始めた時に古民家バンクでこの物件を見つけたのです。

ATELIER BY M.CHRISTIAN LACROIX. Highline 1100 WT RF52752714 perse red-HOUSE OF zutto-2

– そういう経緯だったのですね。

建築は、築70年を経た材木倉庫でした。古民家再生というと柱や梁を生かした和風の事例が多く見られますが、私はグローバルな感覚をもとに、自分が一番好きなモダンデザインの要素を取り入れながら自分たちのライフスタイルを表現したいと考えました。既製品はほとんど使わず、ドアやモールディングも自分でデザインしています。そして、私は子供のころからカーペットが大好きなのですが、このデザインを進めていた頃に、クリスチャン・ラクロワがデザインしたegeのカーペットを初めて目にして、絶対にこれを使いたいと即決しリビングダイニングに敷きました。

高橋:レコーディングの際に訪れたのですが、リビングはとても天井が高く開放感があり、カーペットの効果で音響的にも優れた空間でした。

川村:天井が高いのは、実は2階の床を撤去したからなのです。一部に中二階がありますが、中央は天井高9.5mの大空間となりました。大勢の人が集まると、リビングではソファに座る人もいれば床の上で脚を伸ばす人もいて、好きな場所でくつろぐことができ、それぞれの会話が二重奏のように重なり合う一体感もとても気にいっています。

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– 施工は地元の工務店に任せたそうですね。

そうなんです。東京でいつも一緒に仕事をする施工会社に依頼すれば、工事中のやりとりは容易になったかもしれませんが、このプロジェクトでは地元の工務店の方に私たちのデザインを知ってもらうとともに、彼らがこれまで手掛けたことがないものを一緒につくるプロセスが、地方創生の根幹になると考えました。工事が進むうちに施工チームの方々もノッてきて、同志のような関係を築くことができました。歴史を表す柱やケニアで買ったアート、モダンな家具を組み合わせることで伝統と現代性を備えた空間は、100点満点の仕上がりになったと思います。

– 地域を元気にするには様々な開発手法がありますが、川村さんのような人が「どれだけ本気で関われるか」という、熱量が大きな鍵だったように感じました。

この拠点をつくるにあたって、「ふるさとの原風景を未来へ」というコンセプトを掲げました。未来をつくるのは子どもだと思っているので、射水の子たちに、こうすればこうなるんだ、こう変われるんだ、ということを見せたいのです。“ふるさと”の魅力を発見しながら、全力でこの拠点をつくったことで、周りの人のバイブスが変わり、また、私自身が一番変わりました。いま、私たちは月に2回ほど、東京のビジネスオーナーなど影響力がある方々を「House of zutto」にお連れして射水の素晴らしさを伝えているのですが、次の段階としては、ゆっくり滞在してもらい、現地の食や、実際の暮らしを体感してもらいたいと考えています。この場ができたことで、東京と富山、そして世界とが、よりクロスしていくようになれば理想的ですね。

写真:コムラマイさん
文:IDREIT®︎(@idreit_com)

 

 

川村明子(Apollo&Char Company)

クリエイティブ・ディレクター / イラストレーター / ヴィーガンカフェ経営。 愛知県出身。ニューヨークの美術大学School Of Visual Arts, Graphic Design学部卒業。Rhodes Family Award受賞。帰国後、企業での勤務を経て、デザイン会社Double Ow Eightを設立。2000年ヴィーガンカフェの草分けエイタブリッシュ創業。2014年企業のブランディング、ロゴやパッケージデザインやコンサルティングを手がける(株)Apollo&Char Company設立。富山県射水市で地域創生事業を機に、2024年10月建築・ライフスタイルショールームHouse of Zutto TOYAMA、2025年4月House of Zutto AOYAMAを開設、現在に至る。

 

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