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Carpet and Sound Rec, Video & Cassette Release Party-Talk Session vol.2  「『アンビエントミュージック』と『建築デザイン』との境界」“Kankyō RecordsのH.Takahashiさん”

OCT. 06, 2025

9月5日に中目黒の光婉/Kōenで、富山県射水市にある「House of zutto」で録音した音源のリリースを記念したイベント「Carpet and Sound Rec, Video & Cassette Release Party – Talk & Live」を開催しました。JOURNALでは、イベント内で行われたトークセッションを2回にわたってご紹介します。

 

第2回目は「Carpet and Sound Rec Vol.1〜3」をプロデュースしたKankyō RecordsのH.Takahashiさん。

聞き手:山倉礼士さん(IDREIT®︎)

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-「『アンビエントミュージック』と『建築デザイン』との境界」をテーマでお話ししたいと思います。まず、アンビエントミュージックとは、という基本から教えてください。

高橋:アンビエント、環境音楽というのは古くは「食事のための音楽」という概念が1400年代にあったと言われています。エリック・サティの家具の音楽も1920年代にありましたが、近年の象徴的なものとしてはブライアン・イーノによる「Ambient 1: Music for Airport」(1979年)がよく知られています。これは巨大な建築空間、空港のためにつくられた音楽です。

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– なるほど、特定の場所のためにつくられた音楽があるのですね。家具の音楽というのは知りませんでしたが、室内の背景のようになるものなのでしょうか。設計者としての活動についても聞きたいのですが、Kankyō Recordsのインテリアデザインはどのように考えたのですか。

高橋:もとはベンチと長机があるだけの設計事務所だったスペースをレコードショップに改装しました。私は設計の仕事をしながら、アンビエントミュージックをずっと制作してきましたが、アンビエントミュージックの空間性と、建築設計との中間地点みたいなものをつくってみたいという気持ちがあり、現在の店舗ができました。
-二つの役割を果たす高橋さんが手掛けた、光婉/Kōenのリスニングルーム「Home Listening Room」はどんな考え方から計画されたのでしょうか。

高橋:この場所はプロジェクトの構想段階で、Kankyō Recordsのグラフィック全般のディレクションをお願いしている大澤悠大さんから話を聞き、音響システムのADAM Audioらとコラボレーションして実現したものです。工場だった建物の中に、音のレベルを測定する防音室があり、そこを有効活用しようとリスニングルームをつくりました。

– 壁はすべて柔らかい素材で包まれているのですね。

壁全面に吸音材を敷き詰めることで、ルーム内で反射が起こらないようにしています。空間全体としては、茶室と枯山水をモチーフにしていて、床にはegeの波模様を立体的に表現したカーペット「ReForm A NEW WAVE」を敷きました。不整形のソファも自分たちでつくっているんですよ。

川村:え、ソファも!どうやってつくったのですか?

高橋:合板をルーターで削った下地に有機的にカットしたスタイロフォームを貼り、ハンドメイドのカバーを掛けています。予算を掛けられなかったので、内装はすべて私たちとKōenのスタッフたちとDIYで仕上げていきました。

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– リスニングルームで音楽を聴くイベントも開催されていますが、このルーム内ではどのように聞こえるのでしょうか。

高橋:このトーク会場のように硬い壁の部屋では、リバーブと呼ばれる反響音が出ますが、リスニングルーム内では反射音がすべて吸収されるので、スピーカーから出る音が直接耳に入ってくるのです。日本建築の茶室は、お茶や器に集中するための空間ですが、このリスニングルームは音に関してそのような効果があると思います。

– なるほど、音を楽しむことに特化した、“茶室”的な小部屋、ということですね。

高橋:ここでしか体験できない音響体験があるので、皆さんもぜひ中に入って聞いてみてください。過去にアンビエントと建築の間にある領域で手掛けたスペースとしては、毎年伊豆で行われる音楽フェス「FFKT」のチルアウトスペースがあります。ここでは、egeのSHEというシリーズのカーペットを床に用い、香りも採り入れて、五感で楽しめる場所としました。クッションを枕に寝転がる人がいたり、ストレッチする人がいたりと、自由度高く楽しんでもらうことができました。こうした、中間的な仕事には楽しみがあるので、今後も、積極的に手掛けていきたいですね。

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– 家具のように空間の一要素となり得るアンビエントミュージックと、建築家という職能が重なり合う部分の魅力は、写真では伝わりにくいものなので、できる限り現地を訪れて体感してみたいなと思いました。本日は、「House of zutto」に込められた思いから、アンビエントミュージックと空間の関わりまで、川村さんと高橋さんのお二人でなければ聞けないトピックばかりで、とても充実した時間となりました。ありがとうございました。

写真:コムラマイさん
文:IDREIT®︎(@idreit_com)

 

H.Takahashi(Kankyō Records)

東京を拠点とする作曲家、建築家でありレコード・ストア「Kankyo Records」 のオーナー。アンビエント作家としてUKの「Where To Now?」、USの「Not Not Fun」、ベルギーの「Dauw」や「Aguirre」、日本の「White Paddy Mountain」といったレーベルからアンビエント作品をリリース。また、”やけのはら”、”P-RUFF”、”Yudai Osawaとのライブユニット”UNKNOWN ME”や” Atoris”としても活動。2024年からは、Atorisでも共に活動する”Kohei
Oyamada”とのユニット”H TO O”として活動を開始、デビューアルバム『Cycle』がUK「Wisdom Teeth」よりリリースされた。

 

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