Interview

INTERVIEW _ Rune Stephansen / Ege Carpets CEO

JUN. 07, 2024

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JOURNALでのインタビュー第二弾では、先頃都内で開催した新作発表会「SHE A TRIBUTE TO HER」に合わせて来日した、Ege Carpets のCEO、ルネ・ステファンセンへのインタビューを公開します。「SHE」の開発ストーリーや、先進的な環境配慮の取り組みで知られる同社が、企業として大切にしていることなどを聞きました。

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— 「SHE」の日本でのローンチ、おめでとうございます! まずは、この新コレクションについてお聞きしますが、なぜ、ローラ・ビルデとリネア・ブレールにデザインを依頼したのですか?

ルネ:
今も人気の「ReForm A New Wave」というコレクションで、彼女たちにカーペットをデザインしてもらったことがあり、その製品はヨーロッパや中東など世界的に大きな成功を収めています。今回、私たちはウール100%の新しいコンセプトの商品を開発するにあたり、彼女たちのことが頭に浮かんだので、ウールを使った新商品を考えているんだけど興味ないかな?って声を掛けたのです。

— そうだったのですね。ローラとリネアが、1930年代の女性アーティストへの敬意をデザインのテーマ(詳細は前回記事 INTERVIEW _ Laura Bilde and Linnea Blæhr をご覧ください)にすると聞いた時は、どのように感じましたか?

ルネ:
その時は、確か Ege Carpets のメンバー5人で彼女たちの話を聞いていたのですが、聞いた瞬間に素晴らしいと思いました。その場にいた全員が同じ気持ちでしたね。とても強いステートメントがあり、今日的なテーマでもある。また、Ege Carpets にとっても意義深いテーマだと感じました。プロダクトにとって、デザインが良いことと同じくらい、ストーリー性があることは大切なことです。

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— 「SHE」にはウール100%という大きな特徴があります。ウールだけを使うことにした背景を聞かせてください。

ルネ:
現在、ホテルなどのホスピタリティービジネスや船舶のインテリアで使われるカーペットのスタンダードは80/20、つまり、ウール80%でナイロン20%の混紡です。これは、堅牢度やメンテナンス性、デザインの表現性などメリットが多くある素晴らしいものです。ただ、ウール100%でも同等のスペックは実現できます。私たちは、サステナブルなカテゴリーでもより多くの選択肢を提供したいので、新たなチャレンジとして、天然素材であるウール100%の製品づくりを今すべきだと考えたのです。

— よくわかりました。ここからは、会社のことについて聞かせてください。日本のインテリアデザイナーたちに伝えたい、Ege Carpets の特徴はなんでしょうか。

ルネ:
私たちは、長年、デザインにとても力を入れてきたカーペット会社です。デザインに重きをおく伝統がある、と言ったらよいかもしれません。これまで、トム・ディクソン、クリスチャン・ラクロワらのデザイナーや設計事務所とともにものづくりをしてきました。私たちは、カーペット業界におけるデザインリーダーでありたいと願っています。また、もう一つ重視しているのは、サスティナビリティーです。デザインとサスティナビリティーの二つを掛け合わせた商品をつくることが私たちの存在意義であり、DNAなのです。高いデザイン性とサスティナビリティーを両立したプロダクトをマーケットに提供したい、日本のお客さまにお届けしたい。

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— なるほど。あなたが会社運営で大切にしているキーワードは、「Double Impact for a Better Tomorrow」だと聞きました。ダブルインパクトというのは、デザインとサスティナビリティーのことですか?

ルネ:
その通りです。私たちの成長というのは、利益を追求するだけではなく、持続可能な成長でなければならないのです。ダブルインパクトという言葉には、企業が成長することと、サステナビリティに配慮するという決意を込めています。わかりやすく言い換えるなら、ものごとをもっと大きな視野で考えていこう、常に企業としてのパーパスをしっかり考えて行動しようというメッセージです。

— Ege Carpetsの環境への取り組みは良く知られていますが、現在、注力している取り組みについて教えてください。

ルネ:
いま力を入れているのは、使用済みのカーペットを回収して、再利用するシステムを確立することですね。回収したもの活用することで、サーキュラーエコノミーをつくりたいのです。タイルカーペットでは、パイルとバッキングを分離するのが難しかったのですが、現在では、研究所レベルでは分離することができます。次の段階として、それをより大規模にできるようにチャレンジしているところです。また、この2年ほどは、パイルとバッキングを接着する新しい接着剤をテストしています。これは、使用済みの自動車用ガラスを原材料としたもので、温室効果ガスを減らすという意味でも、とても意味があるものです。これからの展開を楽しみにしていてください。

— さまざまな開発に取り組んでいるのですね。循環型のものづくりの実現に期待しています。今日はありがとうございました。

文:IDREIT®︎(@idreit_com

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注釈
※1 トム・ディクソン(TOM DIXON)
1959年にチュニジアで生まれたプロダクト・デザイナー。4歳から家族でイギリスに移住。青年期にミュージシャンなどをしつつ独学で溶接を習得。以降、様々なプロダクトを世に送り出す。S-CHAIRや、MELT シリーズなど、手工芸とインダストリアルテクノロジーの融合と言われる数々の製品を生み出し、世界中で多くのファンを獲得する。

※2 クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)
1951年、フランス南部のアルルに生まれる。モンペリエ大学卒業後、パリへ移り住む。1978年エルメスに入社、1981年オートクチュールのチーフデザイナーに就任。ベルナール・アルノーにその才能を見出され、1987年、自身の名を冠したブランド「Christian Lacroix」を設立。フランスの伝統を下地にしたデザインは、各界から称賛を集める。

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